No never:2

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 「確かに、坊がその気になって己を磨けば、偉大な魔法使いとして名を遺すほどの存在にもなれよう。だがの・・名誉などは一時の空しい賞賛でしかない。本当に大事にすべき価値ある物は、他人との繋がりじゃよ」
「・・それが、恋であると?」
「まぁ、一概にそれだけとは言わぬがな。どうせなら、ロマンチックに実感出来る方が良いではないか。ほれ、気持ちも若返るしのぅ」

 いえ、ボクは実年齢も若いので・・という言葉は、さすがに飲み込む。
 他人との繋がり・・恋ねぇ。
 どこかくだらなく感じるのは、マリス様の人柄のせいだろうか。とてもじゃないけど、素直に受け入れる気になれない。
 心無しか頭痛もしてきた。それ以上に、右手がズキンと痛んで・・ジンくんの本気に傷ついた腕は、もぅ、ほとんど治りかけている。
 あのとき・・多少、手加減したとはいえ、放った魔力そのままを綺麗に返した彼の実力は、以前とは全く違っていた。
 あんな短時間で、ここまで成長できるなんて・・それほど、アリスを愛していたということか。
 他人を想う気持ちが、人を強くするのは確かなんだ。
 だからといって、ボクまでもが恋しなくてはならない理由にはならないけど。

「ふむ・・わらわの占術によると、なかなかに良い出逢いがありそうじゃぞ?」

 いつの間に占いなどしていたのか、ボクを顔をまじまじと見つめ、ニッコリ微笑むマリス様。
 いや、正しくは・・“ニンマリ”?

 ──やはり、面白がっているだけとしか・・。

 疑いを込めて、鋭い視線を送って見ても、彼女は全く意に介さなかった。
 それどころか、予想外に強引な手段に打って出る。

「御託を並べるより、身を以て知るが早かろう」
「?」
「去ね」

 やはりニッコリ愛らしく微笑んだ先代魔女王は、先刻、アリスたちを人間界へ送り出したのと同様の──それ以上に強力な魔力を、ボクに向けて放つ。



「・・・・・」

 気がつくと、見覚えはあるけれど、違う場所に移動していた。
 ボクはボクの住処から叩き出されたんだ。
 小綺麗なマンションの一室。設えられたもの、雑貨などの全てはボクが生活していたそのままに、不自由なく同じではあったけれど、ここは魔法界ではなく・・。

「・・人間界?」

 なにが“良い出逢い”だ。
 人間との出逢いに、繋がりに、どれほどの価値があるというのだろう。
 魔力を持たず、魔法の使えない、低能な存在から得るものなどあるわけがない。
 マリス様には悪いけど、帰らせて貰おう。
 あっさり舞い戻れるものと考えていたボクが甘かったことを、思い知らされる。

「・・あのババァ──」

 ご丁寧にも、彼女はボク専用の魔法界への通路を塞いでくれていた。
 つまりは、元居た世界には戻れず、人間界に留まることを余儀なくされたということ。
 腐っても、稀代の前魔女王といったところか・・その能力は計り知れない。というより、本当に未知数だ。妖怪並みじゃないのか?

「なぜ、ボクがこんな目に・・」

 何度目か解らない、深いため息をついて、小さく首を振る。
 けれど、嘆いていても仕方ない。
 こうなってしまったなら、せいぜい、状況に順応して楽しむさ。
  自分で言うのもなんだけど、ボクは転んでただで起きるような、しおらしい性格をしていなかった。

「そうだな・・手始めに、彼らと仲良くしてみようか?」

 ボクを見て、どんな反応をしてくれるだろう。
 彼女も彼も、きっと驚きながらも受け入れてくれるに違いない。
 明日から、新しい生活が始まるんだ。

 そして、新しい出逢いも・・。
 悔しいけど、マリス様の占いはやっぱり正しくて、ボクはつくづく、彼女がただ者ではないことを知るのだった。 

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