「・・母さん。なんでこんな試すような真似を?」
「うーん、誤摩化せないみたいねぇ」
「へらへら笑う顔に殺意覚えて、メグの息子でも抹殺したくなったけど・・とりあえず、合格かしらね」
母親とは違う、物騒な女の人の声。自分のすぐ隣から伸びた手が、食べかけのデザートを奪う。
見ると、委員長によく似た容姿の、だが、何十倍も妖艶な色香を漂わせた、赤い瞳の女性がくつろいでいた。
一目で分かる、その正体。
見ると、委員長によく似た容姿の、だが、何十倍も妖艶な色香を漂わせた、赤い瞳の女性がくつろいでいた。
一目で分かる、その正体。
「魔女王リリス様・・委員長の、母さん・・か?」
「一応は初めまして、かしらね。そうよ。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経文句無し、家事全般得意な自慢の一人娘・有栖の母、黒井リリスとは、アタシのことな のよ。はぁ・・やっぱりオイシイ。もぅね、どんな名店の料理も、アリスちゃんの手料理に比べたら、所詮は小学生の調理実習レベルよね」
「一応は初めまして、かしらね。そうよ。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経文句無し、家事全般得意な自慢の一人娘・有栖の母、黒井リリスとは、アタシのことな のよ。はぁ・・やっぱりオイシイ。もぅね、どんな名店の料理も、アリスちゃんの手料理に比べたら、所詮は小学生の調理実習レベルよね」
電話で話したのと同じく、必要以上の美辞麗句で娘を評したリリス様は、奪い取ったデザートに舌鼓を打ち、一人で感動している。
他人ちのコトとやかく言える立場じゃねーケド・・やっぱ、バカ親だ。うちと同じく、な。
他人ちのコトとやかく言える立場じゃねーケド・・やっぱ、バカ親だ。うちと同じく、な。
「ゴチソウサマ!で?メグの息子、どうするつもりなのよ。うちのカワイイ一人娘、むざむざ攫われちゃって、このまま大人しく引き下がろうってことないわよね?」
あっという間に平らげた魔女王は、オレの目をじっと見つめ、訊ねた。
どうするって・・あぁ!!
すぐに意図を察したオレは、大きく頷く。
どうするって・・あぁ!!
すぐに意図を察したオレは、大きく頷く。
「取り戻すに決まってンだろ?あのヤロー・・ぜってぇ、ブッ飛ばす!」
「よく言ったわ。そうこなきゃ、助けた甲斐がないものね」
「あらぁ、リリスちゃん。もし、息子が怖じ気づいて女の子ほっぽりだしちゃうような、情けない玉無しちゃんだったら、わたしが足腰立たなくなるまでイタイ目遭わせて、引導渡していてよ?」
「母さん・・」
「よく言ったわ。そうこなきゃ、助けた甲斐がないものね」
「あらぁ、リリスちゃん。もし、息子が怖じ気づいて女の子ほっぽりだしちゃうような、情けない玉無しちゃんだったら、わたしが足腰立たなくなるまでイタイ目遭わせて、引導渡していてよ?」
「母さん・・」
我が母ながら、実の息子に対して末恐ろしいことを笑顔で言ってくれる・・。
背中に走った悪寒を強制的に排除し、オレは目の前の大人に言った。
背中に走った悪寒を強制的に排除し、オレは目の前の大人に言った。
「その前に・・色々と、解ンねーコトあるんだけど、知ってたら話してくれ。もしくは、知る方法があれば、教えて欲しいんだ」
とにかく、今回の──というか、委員長に関しては不明瞭なことが多すぎる。
忘れてるオレも悪いんだろうが、それすら、なんらかの特別な力が働いてるみたいだし・・自然に思い出すのに任せる時間はなさそうだった。
忘れてるオレも悪いんだろうが、それすら、なんらかの特別な力が働いてるみたいだし・・自然に思い出すのに任せる時間はなさそうだった。
「ホホホ!アタシを誰だと思ってるの?魔法界を統べる、女王よ」
「んじゃ、真相を知ってンだな?教えてくれ。委員長はなんでオレの記憶を?オレはどうやって、彼女の魔力を封じたんだ?みすみす、魔女としての能力と女を捨てるってどういうことだ!?」
「そんなこと」
「うん?」
「アタシが知るわけないでしょ。その人の記憶はその人だけのもの。他の人が知ってるなんてこと、まずないわ。無理」
「んじゃ、真相を知ってンだな?教えてくれ。委員長はなんでオレの記憶を?オレはどうやって、彼女の魔力を封じたんだ?みすみす、魔女としての能力と女を捨てるってどういうことだ!?」
「そんなこと」
「うん?」
「アタシが知るわけないでしょ。その人の記憶はその人だけのもの。他の人が知ってるなんてこと、まずないわ。無理」
胸を張って答えるリリス様を前に、オレは盛大にソファーからズレ落ちた。
なンだ、ソレ。ちっとも役に立たねーじゃん!期待して損した・・。
落胆も露にソファーに座り直し、どうしたものかと考える。
委員長の魔力を封じたのは小さい頃のオレで、小さい頃のオレの記憶を封じたのは委員長。まず、オレの呪いを解かないことには、委員長に掛けた呪いを解く方法はわからない・・。
でも、魔法の使えない委員長にゃ、オレに掛けた魔法を解くことなんてできるはずもなく・・あれ?
するってぇと、互いに手詰まりで方法は・・ないんじゃ?
なンだ、ソレ。ちっとも役に立たねーじゃん!期待して損した・・。
落胆も露にソファーに座り直し、どうしたものかと考える。
委員長の魔力を封じたのは小さい頃のオレで、小さい頃のオレの記憶を封じたのは委員長。まず、オレの呪いを解かないことには、委員長に掛けた呪いを解く方法はわからない・・。
でも、魔法の使えない委員長にゃ、オレに掛けた魔法を解くことなんてできるはずもなく・・あれ?
するってぇと、互いに手詰まりで方法は・・ないんじゃ?
──どうすんだよ、オイ・・。
「なに先走って考えてるのかしらね。まぁ、話は最後まで聞きなさい、ボウヤ。アンタの記憶を封じたのがアリスちゃんなら、アタシが魔法を解いて上げられるのよ」
見兼ねたリリス様が事も無げに言う。
オレはぽかーんと口を開けたまま、打開策を打ち出した妖艶な美女を見た。
オレはぽかーんと口を開けたまま、打開策を打ち出した妖艶な美女を見た。
「へ?でも、魔法は掛けた本人にしか解けねーンじゃ?」
「あらぁ、そんなことないわよぉ?掛けた人より、解く人の実力が上なら、問題なく解けちゃうわ~。魔法というのはね、実力勝負なのぉ。知らなかったぁ?」
「・・シラネ。あー・・待て。そいや、ヤツが言ってたな・・『抜け出せればいいけど、ボクはキミより力が上だし、無理だろうね』とかなンとか」
「あらぁ、そんなことないわよぉ?掛けた人より、解く人の実力が上なら、問題なく解けちゃうわ~。魔法というのはね、実力勝負なのぉ。知らなかったぁ?」
「・・シラネ。あー・・待て。そいや、ヤツが言ってたな・・『抜け出せればいいけど、ボクはキミより力が上だし、無理だろうね』とかなンとか」
去り際に聞いた、黒羽の勝ち誇った言葉を思い出し、オレは自分の無力さを思い知る。
悔しさに歯噛みするオレとは対照的に、母親二人はといえば、顔を見合わせて、ただ、苦く笑った。
悔しさに歯噛みするオレとは対照的に、母親二人はといえば、顔を見合わせて、ただ、苦く笑った。
「カイちゃんも必死ねぇ~。ジンジン相手に、そぉんな啖呵切っちゃうなんてぇ」
「気持ちは解らなくもないけど、うちの娘泣かせて、タダで済むと思ってるのかしら?しかも、意思を無視して連れ去るなんて、重罪だわよ。フフフ・・」
「気持ちは解らなくもないけど、うちの娘泣かせて、タダで済むと思ってるのかしら?しかも、意思を無視して連れ去るなんて、重罪だわよ。フフフ・・」
実の母親であるが故の殺気を纏い、リリス様が不敵に微笑む。
もし、それが本当なら・・おかしくないか?
もし、それが本当なら・・おかしくないか?
「・・だったら、委員長に掛けたオレの呪い、リリス様が解いてやりゃ、こんなややこしい状況になってねーンじゃね?」
そうだ。実力勝負だって言うなら、遥かにオレの上を行く魔力を持った魔女王には、容易いパズルを解くようなもの。
なんでそれをしなかった?
なんでそれをしなかった?
「だから、メグが言ったでしょうが。掛けた人より、解く人の実力が上なら、問題なく解けるって。アタシだって出来るものなら、ボウヤに言われるまでもなく、とっくにやってるわよ」
「だから・・なンで出来ないワケ?」
「だってぇ、そういうことなんだもん。とにかくぅ、リリスちゃんはもちろん、わたしにもジンジンが掛けた魔法を解くことはできないのぉ」
「・・・・・ワケわかんねーよ?」
「あーもー、とにかく!」
「だから・・なンで出来ないワケ?」
「だってぇ、そういうことなんだもん。とにかくぅ、リリスちゃんはもちろん、わたしにもジンジンが掛けた魔法を解くことはできないのぉ」
「・・・・・ワケわかんねーよ?」
「あーもー、とにかく!」
追求を断ち切るように、リリス様がオレの肩を勢い良く叩く。
「ボウヤの魔法を解くわ。いいこと?アタシの目を見て・・ずっと奥の方よ」
「お・・オゥ」
「お・・オゥ」
俄然やる気の魔女王に促されるまま向かい合って座り、赤い瞳の奥の瞳孔をじっと見つめた。
小さな黒い点は徐々にその大きさを増し、あっという間に一面を塗りつぶす。
小さな黒い点は徐々にその大きさを増し、あっという間に一面を塗りつぶす。
「黒衛仁・・心の奥底に封じ込められた忘れ去られし記憶・・浮上なさい。阻むモノは今すぐ散りなさい。魔女王リリスの名の元に、全ての柵は役目を放棄なさい」
歌うような声はオレの中のナニかを確実に壊し、解放していった。
真っ黒な世界が徐々に白け、それぞれ色づいては、忘れていた景色を形作る。
真っ黒な世界が徐々に白け、それぞれ色づいては、忘れていた景色を形作る。
「ジン」
・・・・・・
赤い目をした黒髪の少女が、目の前に立っていた。
変わらない面影を宿す、その子の名をオレは呼ぶ。
赤い目をした黒髪の少女が、目の前に立っていた。
変わらない面影を宿す、その子の名をオレは呼ぶ。
「アリス」
急速に蘇る記憶。
いつも隣に居た少女。
共に喜び、悲しみ、楽しんで──喧嘩もした。
それでも無邪気に大好きだと言い合えた頃は良かったんだ。
器用な彼女。
血筋も手伝って、年を重ねれば重ねるほど、魔法の腕前に差が生まれて・・。
いつも隣に居た少女。
共に喜び、悲しみ、楽しんで──喧嘩もした。
それでも無邪気に大好きだと言い合えた頃は良かったんだ。
器用な彼女。
血筋も手伝って、年を重ねれば重ねるほど、魔法の腕前に差が生まれて・・。
「ジンなんて、ワタシに勝てないくせに」
何気ない軽口。
まだ精神の未熟なオレは、なぜかそのとき、マトモに取ってしまった。
まだ精神の未熟なオレは、なぜかそのとき、マトモに取ってしまった。
「だって仕方ないじゃん。おまえ、ユウシュウなんだもん」
「・・なによそれ。オンナに負けて、悔しくないの?」
「勝てるわけがねぇんだよ。おまえ、魔女王の子だし。特別でオレとは違うんだからさ」
「・・なによそれ。オンナに負けて、悔しくないの?」
「勝てるわけがねぇんだよ。おまえ、魔女王の子だし。特別でオレとは違うんだからさ」
彼女が最も傷つく言葉を、オレは言ってしまった。
「ひどいよ・・そんなの・・関係ないでしょ」
そう、圧倒的に悪かったのはオレなのに、素直になれなくて、どうしようもない差が悔しくて。
「ひどいのはどっちだよ。関係ないなら、なんで勝つとか負けるとか言うんだ?所詮、オレなんて、ただの引き立て役なんだろ」
更にひどい言葉で傷を抉ったんだ。
悲しい目で見つめて来る赤い瞳。
悲しい目で見つめて来る赤い瞳。
「・・バカ。ジンなんて・・嫌い」
涙をいっぱい溜めて、しゃくりを上げながら走り去った、小さな背中。
込められた真意を理解しようともせず、ただ嫌われたんだという事実に、オレはお門違いな怒りを彼女に抱く。
込められた真意を理解しようともせず、ただ嫌われたんだという事実に、オレはお門違いな怒りを彼女に抱く。
「なん・・だよ。人の気も知らないで・・。嫌いだ?・・ふざけんな。“ユウシュウなマジョ”なんて──認めない。魔法なんか・・無くしちまえばいいんだ!!」
魔力を帯びた言葉は、そのまま、見えない力となって彼女を縛り、魔法を封じる結果となる。
──違う、望んだのはこんな結果じゃない。
オレはただ・・アリスに好きでいて欲しかったんだ。同じ位置で肩を並べて、オレだけを見ていて欲しかった。
──違う、望んだのはこんな結果じゃない。
オレはただ・・アリスに好きでいて欲しかったんだ。同じ位置で肩を並べて、オレだけを見ていて欲しかった。
なんてことだ。
「ベタ惚れじゃねぇか・・」
委員長に掛けられた魔法を解かれ、忘れていた小さい頃を思い出したオレは、開口一番呟き、頭を抱える。
くだらない・・ホントに下らない意地で、オレはなにをやってるんだろう。
くだらない・・ホントに下らない意地で、オレはなにをやってるんだろう。
「思い出したご感想はいかがかしら?」
愛しい少女と同じ色の目が、探るようにオレを見る。
似すぎた顔が、今のオレには辛かった。
ただひたすらに・・情けなく思う。
似すぎた顔が、今のオレには辛かった。
ただひたすらに・・情けなく思う。
「オレって大バカ」
「「その通り」」
「「その通り」」
母親たる女二人は、声を揃えて大きく頷いた。
「散々泣かせて、辛い想いさせてきたって意味じゃ、ボウヤはカイを遥かに凌ぐのよね」
「そうなのよねぇ。のほほんと生きて来ちゃってぇ。我が息子ながら、何度、首締めて息の音止めてやろうかと思ったか解らないわぁ」
「そうなのよねぇ。のほほんと生きて来ちゃってぇ。我が息子ながら、何度、首締めて息の音止めてやろうかと思ったか解らないわぁ」
・・だからか。時折、さっきみたいに鼻と口押さえて、息止めたりしたのは・・。
母さん。悪ふざけでなく、半分、本気だったんだな?
密かな生命の危機があった事実を知り、オレは半目で実親を睨め付けた。
母さん。悪ふざけでなく、半分、本気だったんだな?
密かな生命の危機があった事実を知り、オレは半目で実親を睨め付けた。
「とにかく、アリスちゃんを無事に連れ帰り、呪いを解くことができたら、全部、水に流してあげる。逆に連れ帰ることはおろか、呪いが成立して魔女としての能力はもちろん、子供の産めない体になろうものなら・・」
「親公認で袋だたきよぉ」
「親公認で袋だたきよぉ」
どこまでも危ない母親・・ちったぁ、息子の肩持てよ。
不満の言葉は、魔女王様が何気に口にしたオレの疑問への答えを耳に、飲み込んだ。
代わりに、よくよくその意味を訊ねる。
不満の言葉は、魔女王様が何気に口にしたオレの疑問への答えを耳に、飲み込んだ。
代わりに、よくよくその意味を訊ねる。
「呪いが成立?子供の産めない体になるって・・どういことだよ」
「魔法・・特に呪詛的マイナスなものってのはね、年を重ねるごとに深く体に浸透してゆき、根を蝕んでいくのよ。女の根ってのがどこか・・ボウヤにも解るでしょう?」
「・・それが、“女を捨てる”ってことか・・」
「ええ。およそ、呪いが成立するのは10年。数えで残された時間はざっと・・一週間ってとこね」
「・・ヤツの言う、時間がねぇってのはホントだったんだな・・」
「魔法・・特に呪詛的マイナスなものってのはね、年を重ねるごとに深く体に浸透してゆき、根を蝕んでいくのよ。女の根ってのがどこか・・ボウヤにも解るでしょう?」
「・・それが、“女を捨てる”ってことか・・」
「ええ。およそ、呪いが成立するのは10年。数えで残された時間はざっと・・一週間ってとこね」
「・・ヤツの言う、時間がねぇってのはホントだったんだな・・」
委員長はたった一週間で、コトが片付けられると本気で思っていたんだろうか。
いまだにオレが小さい頃の記憶を失ったままで、呪いを解く方法を見出せずにいたら、一週間ではとても足りないはずだ。
頭の良い委員長が可能性のないまま、手をこまねいているとは思えない。
となると、他に方法が?
いまだにオレが小さい頃の記憶を失ったままで、呪いを解く方法を見出せずにいたら、一週間ではとても足りないはずだ。
頭の良い委員長が可能性のないまま、手をこまねいているとは思えない。
となると、他に方法が?
「もしかして・・呪い解く裏技みたいなん、あるのか?」
「裏技?」
「なんつーか・・正攻法じゃない解き方?みたいな」
「あぁ・・なくはない、けど」
「裏技?」
「なんつーか・・正攻法じゃない解き方?みたいな」
「あぁ・・なくはない、けど」
思い当たったのか、魔女王が曖昧に頷いた。
だが、続く言葉が無い。視線を泳がせては、溜息をついて、首を振る。
そんなに言いにくいこと、なのか?
だが、続く言葉が無い。視線を泳がせては、溜息をついて、首を振る。
そんなに言いにくいこと、なのか?
「あのねぇ、ジンジン。これは根を蝕む呪いなのよぉ」
小さく袖を引かれて顔を上げると、悪戯っぽく微笑む母親と目があった。
「うん?」
「弱った根に必要なのは、栄養よねぇ」
「そうだな」
「この場合の栄養ってぇ、なにになるのかしらぁ?」
「弱った根に必要なのは、栄養よねぇ」
「そうだな」
「この場合の栄養ってぇ、なにになるのかしらぁ?」
にっこりというより、にんまりという形容詞がピッタリの表情で言って、オレの反応を待つ、一見して少女のように無垢なメグさん。
あー・・エート・・つまりは・・そーゆーコト?
言葉を濁したリリス様に視線を戻すと、ちょっとだけ不機嫌そうな顔でこくりと頷く。
あー・・エート・・つまりは・・そーゆーコト?
言葉を濁したリリス様に視線を戻すと、ちょっとだけ不機嫌そうな顔でこくりと頷く。
「あの子はね、そういうことを覚悟して、今回の同居を計画したってわけ。女の子がそこまでやってるんだから、ボウヤも根性見せて、ちゃんと帰って来なさい。二人で、よ?」
委員長は・・いや、アリスは、どんな気持ちで丸10年を過ごしてきたんだろう。自分のことを全く覚えていないオレを目の当たりに、悲しくて、悔しくて、泣いたのかな。
それでも・・一緒に過ごす時間を、待ち望んでくれていた?
それでも・・一緒に過ごす時間を、待ち望んでくれていた?
『わたしには・・時間がないのよ』
あの、恐ろしく不器用な彼女がそーゆー覚悟を持つということが、どれほど大きなことか・・まして、コトがコトなだけに、掛かる重圧は相当なものだったに違いない。
ごめんな・・ホントにオレ、最低だ。
「言われるまでもねぇよ。ヤツをブッ飛ばして、アリスを取り戻す。あの時、素直になれなかった言葉を伝えて・・聞くんだ」
アリスの口から、ちゃんと、な。
それが呪いを解くカギ。
それが呪いを解くカギ。
「カイの居場所はわかってるわ。飛ばすわよ」
勝てる見込みはないかもしれない。
漫画みたいに死にかけたら強くなってマシタとか、実はものすごい力秘めてるんデスとか、そんな都合のイイ状況になるわけもなく、いまだにオレが使える魔法は、便利な道具レベル。
それでも、今、行かなくて、いつ行くんだ?
きっと、アリスはオレを信じて、戦っているはずだ。
これ以上、彼女を独りになんて──しておけない。したくない。
たとえ負けても、アリスだけは帰すんだ。
漫画みたいに死にかけたら強くなってマシタとか、実はものすごい力秘めてるんデスとか、そんな都合のイイ状況になるわけもなく、いまだにオレが使える魔法は、便利な道具レベル。
それでも、今、行かなくて、いつ行くんだ?
きっと、アリスはオレを信じて、戦っているはずだ。
これ以上、彼女を独りになんて──しておけない。したくない。
たとえ負けても、アリスだけは帰すんだ。
「ああ、頼む。・・母さん、もしオレが──」
「なぁに?」
「・・・・・いや、イロイロありがと。ごめんな、出来の悪い息子で」
「あらぁ、よく言うでしょ?バカな子ほど、カワイイのよぉ。ジンジン」
「なぁに?」
「・・・・・いや、イロイロありがと。ごめんな、出来の悪い息子で」
「あらぁ、よく言うでしょ?バカな子ほど、カワイイのよぉ。ジンジン」
もしもに備えての別れの挨拶を、母親はわかってないのか、わかってて軽口をくれたのか・・。
だから、 オレも笑ってこう言ってやった。
だから、 オレも笑ってこう言ってやった。
「ジンジンって言うなって」
「ふふ・・行ってらっしゃい、バカ息子ちゃん。待ってるわぁ」
「ふふ・・行ってらっしゃい、バカ息子ちゃん。待ってるわぁ」
にっこり微笑む顔に、言葉に、力を貰った気がする。
ぽやっとしてても、やっぱ、血の繋がった親なんだなぁ。
ぽやっとしてても、やっぱ、血の繋がった親なんだなぁ。
「黒衛仁・・魔女王リリスの名において、かの地へ・・いきなさい」
魔力を帯びた声とともに胸を押され──飛ぶ。
無謀でもいい、バカなのは承知の上。
せいぜい、足掻いてやるさ。
せいぜい、足掻いてやるさ。
一人で全部抱え込んで、独りで解決しようとしていた、オレ以上にバカな・・最愛の女の子のために。