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──とても幸せな夢を見た気がするわ。
ふっと目が覚めて、明らかに自分の部屋ではない回りの景色に、なにより、鈍く走った下半身の痛みに、夕べの出来事が夢ではなかった事実を知る。
そうか・・わたしたち、疲れてそのまま寝ちゃったんだわ。
布団をめくったら、きっと、スゴい状況ね・・。
とにかく、お風呂に入って身体を綺麗にしてから、後片付けを──?
寝起きの割に冷静な頭で考え、いざ、身を起こそうとしたところで、胸の辺りの違和感に気づいた。
そうか・・わたしたち、疲れてそのまま寝ちゃったんだわ。
布団をめくったら、きっと、スゴい状況ね・・。
とにかく、お風呂に入って身体を綺麗にしてから、後片付けを──?
寝起きの割に冷静な頭で考え、いざ、身を起こそうとしたところで、胸の辺りの違和感に気づいた。
「・・・」
しっかりと腰に腕を回し、猫の仔みたいに身体を丸めて、わたしの胸を枕に寝息を立てている・・ジン。
不意に、くすぐったく密着している金髪が揺れて、剥き出しの肌に顔を擦り寄せられ、麻痺していた羞恥心が蘇った。
不意に、くすぐったく密着している金髪が揺れて、剥き出しの肌に顔を擦り寄せられ、麻痺していた羞恥心が蘇った。
「っ・・!!」
一気に熱くなる頬。慌てて身を起こし、手近なタオルケットをたぐり寄せて身体を隠す。
「・・惜しい。最高に柔らかい、心地イイ枕だったのにな」
いつの間にか開いた翡翠色の瞳が、からかいを含んでわたしを流し見、ふあーっと欠伸を洩らして、同じように身を起こした。
金髪をサラリとかきあげ、にっこり笑う。
金髪をサラリとかきあげ、にっこり笑う。
「おはよ、アリス」
「・・おは、よう。ジン」
恥ずかし過ぎる形で一緒に眠っていたことを、少しだけ責める意味を込め、軽く睨みながら挨拶を返した。
だって・・狡い。わたしはなにも身につけていないのに、ジンはちゃっかり下を履いているんですもの。
最も・・裸なままでいられても、目のやり場に困るのだけど・・。
対する彼は、小さく笑ってわたしの視線を流し、ただじっと見つめる。
「・・おは、よう。ジン」
恥ずかし過ぎる形で一緒に眠っていたことを、少しだけ責める意味を込め、軽く睨みながら挨拶を返した。
だって・・狡い。わたしはなにも身につけていないのに、ジンはちゃっかり下を履いているんですもの。
最も・・裸なままでいられても、目のやり場に困るのだけど・・。
対する彼は、小さく笑ってわたしの視線を流し、ただじっと見つめる。
「──綺麗だなぁ」
「?」
「うちの母親も、リリス様も、ババァも紅い瞳だが・・アリスの目が一番好きだ」
「ぁ・・ありがとぅ・・」
「?」
「うちの母親も、リリス様も、ババァも紅い瞳だが・・アリスの目が一番好きだ」
「ぁ・・ありがとぅ・・」
面と向って言うものだから、照れてしまう。
紅い瞳・・紅?
紅い瞳・・紅?
「・・困ったわ」
「ん?」
「急に紅い色だなんて、学校どうしよう。カラーコンタクトは柄じゃないから、不自然すぎる・・」
「んなの、魔法で隠せばイイだろ?うちの母親は、そうやって普段を過ごしてるぞ」
「魔法・・」
「コンタクトがダメなら、他に方法ねーと思うけど」
「ん?」
「急に紅い色だなんて、学校どうしよう。カラーコンタクトは柄じゃないから、不自然すぎる・・」
「んなの、魔法で隠せばイイだろ?うちの母親は、そうやって普段を過ごしてるぞ」
「魔法・・」
「コンタクトがダメなら、他に方法ねーと思うけど」
確かに、ジンの言う通り。方法は限られる。
だけど・・でも・・。
だけど・・でも・・。
「自分を偽ることに、魔法は使いたくないわ・・」
「アリス?」
「ジンの前では、素の自分でいたいの」
「アリス?」
「ジンの前では、素の自分でいたいの」
今まで、散々、自分を偽って、本当の気持ちを隠して過ごして来たんだもの。
もぅ、偽ることも、隠すこともしたくない。
もぅ、偽ることも、隠すこともしたくない。
「・・んじゃ、オレが掛けてやるよ」
え?と思ったときには、もぅ、彼の手がわたしの頬を包み込んでいて、反射的に瞑った瞼に唇が触れた。右と、左・・そして、唇にキスを落とされ、離れる。
「これで、オレとアリス以外には黒く見えるはずだ」
「本当に?」
「ああ。オレの目には、変わらず綺麗な紅い色で見えてる。望み通り、素のアリスだよ」
「・・嬉しい。ありがとう、ジン。ええと・・最後のも意味があるの?」
「ソッチはただ、したかっただけ」
「本当に?」
「ああ。オレの目には、変わらず綺麗な紅い色で見えてる。望み通り、素のアリスだよ」
「・・嬉しい。ありがとう、ジン。ええと・・最後のも意味があるの?」
「ソッチはただ、したかっただけ」
さらりと言われ、面食らってしまう。絶対にジンは、一つ許すと、十までもしてくるタイプだわ・・。流されないように気をつけないと。
小さく溜息をついて、胸の内でそんなことを思っていると、不意に髪を引かれた。長い一房を弄んでいた彼が、おそるおそる訊ねてくる。
小さく溜息をついて、胸の内でそんなことを思っていると、不意に髪を引かれた。長い一房を弄んでいた彼が、おそるおそる訊ねてくる。
「身体は・・大丈夫か?」
「・・うん。やっぱり少し痛むけど・・それだけ。他は普通みたい」
「そっか・・良かった。身体に無理かかるのぁ、女だけだからさ。後遺症とか心配で・・安心した」
「・・うん。やっぱり少し痛むけど・・それだけ。他は普通みたい」
「そっか・・良かった。身体に無理かかるのぁ、女だけだからさ。後遺症とか心配で・・安心した」
はーーっと大きく息を吐いて、頭を掻くジン。
「とりあえず、わたし、お風呂入りたいんだけど・・いいかしら?」
「あ・・そ、そうだな。一応、シーツとかの後片付けは魔法でしといたが・・身体までは、な」
「とりあえず、わたし、お風呂入りたいんだけど・・いいかしら?」
「あ・・そ、そうだな。一応、シーツとかの後片付けは魔法でしといたが・・身体までは、な」
言われ、シーツや布団にあるはずの痕跡が全くないことに気づいた。
・・なんてこと・・。
ジンに全部やらせてしまったなんて・・罪悪感にも似た後味の悪さが広がって、使えない自分が恥ずかしく思える。
・・なんてこと・・。
ジンに全部やらせてしまったなんて・・罪悪感にも似た後味の悪さが広がって、使えない自分が恥ずかしく思える。
「ごめんね・・本当にありがとう。入ってく──」
ベッドサイドに立ち、一歩踏み出そうとして・・ぺたりと床にしゃがみ込んでしまった。その不自然過ぎる動作に、ジンが首を捻る。
「アリス・・?ナニかにつまずいたか?」
「ううん・・」
「ううん・・」
どうしよう・・。
「・・足が・・動かないの。どうやら、腰が抜けてるみたい・・」
「・・・」
「・・・」
タオルケットにくるまったまま、その場を動けず、彼を見上げた。
困ったわ。ずっとこのままで居るわけにはいかないし、かと言って、ジンに運んでとは口が裂けても言えない。
すぐ、治ってくれれば・・あ。
そこまで考えて、気づいた。そうだわ、わたし、魔女としての能力を取り戻したのだから、魔法が使えるはず。
子供の頃、封じられて以来だからブランクがあるけど・・これぐらいなら、治せるかもしれない。
困ったわ。ずっとこのままで居るわけにはいかないし、かと言って、ジンに運んでとは口が裂けても言えない。
すぐ、治ってくれれば・・あ。
そこまで考えて、気づいた。そうだわ、わたし、魔女としての能力を取り戻したのだから、魔法が使えるはず。
子供の頃、封じられて以来だからブランクがあるけど・・これぐらいなら、治せるかもしれない。
「ちょっと、魔法で治してみ・・」
言い終わらないうちに、ふわりと身体が浮いた。
有無を言わさず、抱き上げられ、ごく近い距離で金髪が笑う。
有無を言わさず、抱き上げられ、ごく近い距離で金髪が笑う。
「あ、ソレ無理。オレが掛けた魔法のせいで、アリスの魔力は抑えられちまうから、大した魔法使えねぇと思う」
「・・どこまでも厄介ね・・。いいわ、今日は大人しく家で休んでおくから。悪いけど、このままわたしを部屋まで運んでくれる?」
「・・どこまでも厄介ね・・。いいわ、今日は大人しく家で休んでおくから。悪いけど、このままわたしを部屋まで運んでくれる?」
結局は・・こういうことになるのね。魔力が戻り、魔女として再起したというのに、わたしはなにをしているんだろう。持っている能力をただの我が儘、選り好みで使わないのでは、以前と同じじゃない。
宝の持ち腐れって、きっとこういうことを言うのね。
宝の持ち腐れって、きっとこういうことを言うのね。
「・・ごめんね、ジン・・迷惑かけて」
「いやいや、原因はオレだし・・ン・・けど、風呂入りたいだろ?身体は、昨日のまんまだし・・」
「それは・・うん・・」
「いやいや、原因はオレだし・・ン・・けど、風呂入りたいだろ?身体は、昨日のまんまだし・・」
「それは・・うん・・」
曖昧に頷きながら、わたしにとって、ジンの指摘は今、一番叶えたい望みであり、回復したらすぐにでも実行に移すつもりでいた。
視線の先で、彼がゆっくりと微笑む。
なにかしら・・胸がドキドキする。
視線の先で、彼がゆっくりと微笑む。
なにかしら・・胸がドキドキする。
──嫌な予感。
「じゃあさ、ついでだし、一緒に入っちまおう」
「え!?」
「つーか、もぅ、休むって連絡しちまった。前みたいに、リリス様の声真似てさ。オレは例のごとく、自主的創立記念日だがな」
「だ、だからって・・なぜ、一緒にお風呂なんてっ・・!い、いい。わたし、動けるようになったら、一人で入るから・・ジン、先に入っちゃって」
「え!?」
「つーか、もぅ、休むって連絡しちまった。前みたいに、リリス様の声真似てさ。オレは例のごとく、自主的創立記念日だがな」
「だ、だからって・・なぜ、一緒にお風呂なんてっ・・!い、いい。わたし、動けるようになったら、一人で入るから・・ジン、先に入っちゃって」
抗議する間にも、本気なのか冗談なのか解らないジンの歩みは止まらず、わたしはとにかく降ろしてくれるよう、体当たりで懇願してみた。
「アリス・・」
歩みを止める彼。
聞き届けてくれたのかしら・・その考えは、甘かった。
聞き届けてくれたのかしら・・その考えは、甘かった。
「あんま暴れっと、丸見えになるぞ」
「──・・っ!!!」
「──・・っ!!!」
ずれ落ちそうなタオルケットを、慌ててたぐり寄せ、前で合わせる。真っ赤な顔で睨みつけても、彼はどこ吹く風。
「ま、風呂入れば、どのみち見えるけどなー」
不敵に笑う表情は、わたしの反応を楽しむ悪戯っ子のそれ。子供の頃、何度か衝突したことがあったけど、ジンは、一度こうと決めたら決して意志を曲げない頑固者だった。
そして、仕方がないわねと折れるのはいつもわたし。
つまり、回避することは不可能。
そうこうしている内にバスル-ムに着いて、タオルケットに包まったままの状態で、洗面台に座らされる。
そして、仕方がないわねと折れるのはいつもわたし。
つまり、回避することは不可能。
そうこうしている内にバスル-ムに着いて、タオルケットに包まったままの状態で、洗面台に座らされる。
「よっと。ちょい・・待ってな」
言って、お湯の温度を確かめたり、マットを敷いたり。甲斐甲斐しく動いては服を脱いで、自身の入浴準備もしてゆく。
そんな様子を眺めて思い直す。どうせ、ジンには全てを見られてしまったし、それ以上のこともしてしまって・・後々、一緒になろうとまで約束した仲なのよね。
今更、隠す必要なんて無いような気もする。
なにより、恥ずかしがればがるほど、きっと、ジンは喜ぶんだわ。そんなの、なんだか悔しい。
そんな様子を眺めて思い直す。どうせ、ジンには全てを見られてしまったし、それ以上のこともしてしまって・・後々、一緒になろうとまで約束した仲なのよね。
今更、隠す必要なんて無いような気もする。
なにより、恥ずかしがればがるほど、きっと、ジンは喜ぶんだわ。そんなの、なんだか悔しい。
「よし、準備完了。さぁ、アリス、観念して一緒に──」
「・・仕方がないわね」
「・・仕方がないわね」
手に持った大きめのタオルを掛けられるより先に、彼の首に飛びつく。
纏っていたタオルケットがはらりと床に落ち、再び触れ合う肌と肌。
纏っていたタオルケットがはらりと床に落ち、再び触れ合う肌と肌。
「観念するのはあなただわ。わたしの入浴時間が長いことは知っているわね?」
「うっ・・」
「逆上せても知らないから」
「いや・・もぅすでに、かなり逆上せてる気分だが」
「うっ・・」
「逆上せても知らないから」
「いや・・もぅすでに、かなり逆上せてる気分だが」
ぽつり洩らした言葉に、二人で笑い合う。
『囚われの姫君が待つのは、愛しい王子様の助け』
ジンはちっとも“王子様”という感じではなくて、むしろ粗雑な“魔王様”という感じだけど、わたしにとっては紛れもなく、待ちわびた愛しい人。
これからは、ずっと一緒ね。